障害福祉事業所のよくある失敗
弊所は、障害福祉事業の指定申請以外にも、障害福祉事業所の運営サポートをしています。
よくあるのが、障害福祉事業に詳しくない行政書士に指定を取ってもらったり、自分で指定申請したものの、細かいルールが分からないから、書類チェックをしてほしいというご依頼です。
そこでよくある失敗や、誤解など、障害福祉事業歴の長い人からしたら、初歩の初歩的な内容かも知れませんが、ご紹介します。
・個別支援計画を正しく作成できていない
個別支援計画の作成の「流れ」について、間違えている人が多いです。
個別支援計画の原案はありますか?
と尋ねたら、「なんですか、それ」とおっしゃる方もいます。
個別支援計画作成の正しい流れは、次の通りです。
1.アセスメント → 2.個別支援計画原案作成 → 3.担当者会議 → 個別支援計画本案完成
簡単に言うと、個別支援計画の下書きのようなものです。
一度作成した個別支援計画の案について、担当者会議で、ああでもないこうでもないと意見を出し合って、二重線で消したり、書き加えたり・・・そういうことをしたのが「個別支援計画原案」です。
それを経て、個別支援計画が完成するのです。
「個別支援計画」はこの流れを踏まえて作成してください。
モニタリングはサービスによって3か月ごとや6か月ごとと決まっています。その際に、「一番最初に作った個別支援計画」のことを指して原案と言っている人もいるのですが、それは誤りです。
正しい流れで個別支援計画を作成できていないと、個別支援計画として認められず、個別支援計画未作成であるとされたら困りますよね・・・。個別支援計画は正しい流れで作成してください。
・処遇改善加算について理解できていない
処遇改善加算は複雑です。
自分で計画書作成をできず、行政書士に依頼する人も多いでしょう。
ですが、その行政書士は、内容をきちんと説明してくれていますか。
説明してくれているなら安心なのですが、そうでない場合は、驚くべきミスがあることがあります。
以前あったのは、「福祉専門職員配置等加算」を取れない状態で、「特定処遇改善加算I」を取っていた例です。
詳しい説明は割愛しますが、要は「特定処遇改善加算I」の前提要件を満たしていないのに、算定していたのです。事業所はよくわからないまま、請求していたので、結局、すべて返す手続きをしてもらいました。(特定処遇改善IIなら要件を満たしていたのですが、申請時に 特定処遇改善I にしていたので、ダメだったのです)
きちんと説明してくれる行政書士なら、そのようなミスはなかったでしょう。(ですが、指定申請時のことだったので、そもそも、その行政書士が要件を理解していなかったと言えます)
・変なコンサルに頼んだ
よく聞くのが、変なコンサルに頼んだ、という話です。
しっかりしたコンサルで、問題が起きていなければ、こちらに相談はないでしょうし、「変なコンサル」という表現はないでしょう。
また、書類を作成して提出や申請まで代わりにするコンサルがいたら、行政書士資格を持っていない場合は違法です。
コンサルの抜け道としては、サポートはするけれど、書類を作るのは本人という形で、本人に書類を提出させるパターンでしょうか。
もし、行政書士なら、多くの行政書士は保険に加入しています。万が一にも、取るべき加算が取れていないなど、金銭的な失敗が生じた場合は、保険で支払うことも可能かも知れません。私も、あまりにひどい行政書士のミスの場合は、「これは、前の行政書士に請求したらどうですか。保険入ってるでしょうし」と言ったことはあります。
ですが、コンサルについては、失敗していても、賠償はないでしょう。
また何かトラブルがあった場合も、行政書士なら、行政書士会などに対応を求めることができます。が、コンサルさんはそういう対応を求める先がありませんよね。
・知り合いの事業所に聞いた
ある事業所であったのですが、「利用者さんが全員帰ってしまったあとは、従業者も早く帰っていいと聞いた」とのこと。それで、勤務時間が短くなっていた事業所がありました。
ですが、事業所はそれぞれ「常勤の勤務時間数」が決まっています。
雇用契約書や就業規則に記載してありますよね。
そして、事業所には「常勤でなければならない」職種の人が数人いるはずです。サビ管や児発管、そのほか、加算をとっていたら、それらの人など。
その人たちが早く帰っていたら、常勤の勤務時間数を満たすことができません。
ほかの事業所に聞いたとしても、正しい情報とは限らないので、必ず、自身で指定権者に確認してください。
ほかの事業所ではなく、「自分で指定権者に確認したら、こう言われた」という事業所さんも居ます。大体は正しい内容なのですが、時々、その内容がおかしいことがあります。それは知識不足から、質問の仕方が悪く、指定権者側も正しく回答ができていない場合です。質問がおかしいと、正しい回答は得られません。
また、指定権者が正しく回答していても、知識がないために、曲解している事業所さんもいます。
・利用者が少ないときは、従業者は来なくてもいいと思っている
放課後等デイサービスなどではまだ少ないですが、グループホームに多い考えです。
多くの人が疑問に思うはずです。利用者が1人もいないのに、従業者は来る必要があるのか。
確かに、利用者がいないと、従業者が来ても意味がないし、できれば、その分の賃金を払いたくないと考える人もいるでしょう。
ですが、開所当初は、前年度の90%の利用者がいるものとして、人員を配置しなければいけません。指定申請書に書きましたよね? その通りに配置してください。
ただし、グループホームの場合、夜間支援員などは、利用者がいなければ配置する必要はありません。
同様の誤解としては、「利用者が少ないから、しばらくは○曜日は休みにしてもいいですよね」という考えです。
初月だけでも、その曜日を休みにするなら、変更届が必要です。または休日については「事業所カレンダーの通り」として、事業所カレンダーに記載する方法があります。ですが、常勤の勤務時間数のことなどもありますし、あまりに自由に「利用者が少ないからこの日は休み」などと決めては問題です。
[暇な時、何をすればいいか]
利用者が決まらず、事業所にスタッフだけで集う。そんな時にオススメなのは、研修です。
障害福祉事業では、年間で必ずやらなければいけないと決められている法定研修がたくさんあります。虐待防止研修・身体拘束適正化研修・・などなど。
利用者が増えてきたら、日々の運営だけで、手いっぱいになるので、ヒマなうちに、ぜひそれらの研修を済ませておくといいでしょう。研修内容や議事録等、フォーマットを作っておけば、翌年からの運営もラクになります。
SNSやHPを充実させるなどの営業活動もいいですね。
最後に
ほかにも書ききれないほどの失敗例はありますので、またおいおいご紹介したいと思います。
誰でも失敗はあると思いますが、運営の勘違いや誤解については早めに気づき、早めに修正することで、痛手を減らすことができます。2年間、間違えて運営してしまったら、長期間、人員が欠如していたということになったりするので・・。
弊所では、実地指導対策(書類整備,運営適正化指導)も受け付けておりますので、お気軽にお問い合わせください。