賃金改善実施期間を変更したい/処遇改善計画書はどうする?
賃金改善実施期間とは
処遇改善における「賃金改善実施期間」とは、処遇改善加算の収入を充当して実際に、福祉・介護職員に賃金を支払う期間のことです。
処遇改善加算を算定する場合、受け取った加算額は、賃金を改善するために、すべて従業者に支払わねばなりません。
その処遇改善分を、従業者に支払う期間をいつにするか。いつからいつまでの期間に賃金を改善するか。それが賃金改善実施期間です。
賃金改善実施期間は、原則 4 月(年度の途中で加算の算定を受ける場合は、その算定を受けた月)から翌年 の 3 月までの最長 12 ヶ月間となります。
処遇改善計画書の賃金改善実施期間は、この原則の記載例通りに「4月〜翌年3月」としている事業所が多いのではないでしょうか。
賃金改善実施期間と、算定期間を同じにするデメリット
算定期間と賃金改善実施期間を、次のように全く同じにする場合のデメリットを考えます。
算定期間 | 4月〜翌年3月 |
賃金改善実施期間 | 4月〜翌年3月 |
賃金改善実施期間を、算定期間と同じにした場合、4月〜翌年3月の間に、賃金改善することになるわけですが、問題は、報酬額の流れが次のようになる点です。
4月〜翌年3月末までに、その年度分の処遇改善加算額を従業者に支払い切る | |
最後の3月算定分については、4/10までに国保連に請求 | |
処遇改善加算額を含めた報酬額が、5/15に入金される |
このような流れになるため、「処遇改善加算分を従業者に支払いきる時点では、受け取る処遇改善加算額が確定していない」ことが問題です。
3月時点では、正確な処遇改善加算の入金額が分からないのです。
もちろん、利用状況から、報酬額を推測することはできます。
しかし、手違いでエラーが起きたりすることもあります。
処遇改善加算額より1円でも多く従業者に支払うためには、受け取り額を予想して、それより、やや多めに支払う必要が出てきます。
多めに支払うと、実際に受け取る処遇改善額より多く支払ってしまい、法人の持ち出し分が増える可能性があるのです。
賃金改善実施期間を算定期間とずらすメリット
その点、賃金改善実施期間を算定期間より2か月あとにズラして、6月〜翌年5月までとすると、処遇改善の加算額が確定した状態で、従業者に支払うことができるため、「1円でも多く」という、ギリギリを攻めることができます。(実際は余裕をもったほうがいいですが)
算定期間 | 4月〜翌年3月 |
賃金改善実施期間 | 6月〜翌年5月 |
多くの事業所さんでは、毎月、処遇改善手当を渡し、手当で支払いきれなかった分を、賞与として支払います。
すでに賃金改善実施期間を決めている場合
新規の立ち上げの時から、弊所が携わらせていただけたら、賃金改善実施期間を2か月ズラすことをご提案できますが、すでに運営しているところでは、ほとんどの場合、賃金改善実施期間は4月〜翌年3月となっています。
そこから、2か月ズラそうとすると、4月と5月という空白の期間が生まれてしまいます。
その期間の「処遇改善手当」は法人の負担になるのでしょうか。
それとも、切り替える年だけ、「4月〜翌年5月まで」と、14か月を賃金改善実施期間とするのでしょうか。
大阪市の場合
年度途中から、ベースアップ等支援加算を算定したいとい事業所があり、そのタイミングに合わせて、処遇改善本体も、賃金改善実施期間をズラしたいということになりました。
大阪市に問い合わせたところ、問題はなく、次のような回答がありました。
新たな処遇改善加算の関連加算の取得により、当初計画から賃金改善実地指導が変更になることは問題ありません。しかし、基本的に賃金改善実地指導は十二月の想定となりますので、計画書及び実績報告書のご提出の際には、経過等がわかる理由所を作成のうえ同封いただくようお願いします。
最後に
賃金改善実施期間を変更したいが、すでに4月〜翌年3月までとしてしまっているので、諦めている事業所の方もいらっしゃるかも知れません。
指定権者に問題がないか確認されたらよいと思います。